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「不動産鑑定士は相場を知らない」と言われるのはなぜ?

不動産鑑定士の業界用語に、「業者ヒアリング」という言葉があります。

この「業者」というのは普通不動産業者(仲介業者)を指しますが、物件によってはデベロッパー(開発業者)だったりもします。

業者ヒアリングとは、その名の通り、鑑定評価の過程で不動産業者に相場や市場動向を直接ヒアリングする作業のことです。

評価業務の中でも、特に債権の売買の際などに行われる担保物件のデューデリジェンス(いわゆるデューデリ)の仕事では、依頼者(サービサーや金融機関など)の意向で、鑑定士に対して業者ヒアリングが求められるのが一般的です。

仲介業者の方の中には、鑑定士というと相場ばっかり聞いてくる印象を持っている人もいます。
鑑定士って試験は難しいし不動産の専門家とか言っている割には、不動産のことを何も知らない」というマイナスイメージにつながっている面もあるようです。

結論から言うと、「不動産鑑定士は相場が分からない」というのはほぼ正しいです。

仲介業の人達からみて、不動産鑑定士が相場を知らないと思われるのは、仲介と鑑定では扱う不動産の範囲が違うことが大きいと思います。

仲介業は、大企業を顧客として全国エリアで事業用物件を扱う法人仲介の分野を除けば、基本的に地域密着です。
例えば、東京の私鉄の駅にある街の不動産屋さんが、大阪の物件を仲介する、ということはまずありません。

また、売買、賃貸のどちらに重きを置くかも業者によって違いますし、エンドユーザー向けのマンションや戸建を扱う人が、REITが購入するような大きい収益物件の売買に関わる、といったこともなかなかありません。
自社のエリア、扱う物件に特化して日々取引をしているので、最新の相場動向が常に蓄積されています。

一方、鑑定士は、全国のありとあらゆる不動産を評価対象とします。
私も、ほとんどの都道府県に行きましたし、評価した物件の規模も小さいものでは数百万、数千万、大きいものは数百億から1千億以上の物件もありました。

対象物件の種類も、更地もあればオフィス、マンション、戸建、巨大な開発用地、物流施設に商業施設、ホテル、別荘、老人ホームやゴルフ場、山林、さらには借地権や底地・・・など無数にあります。

これらのあらゆる地域の土地の相場や建物の賃料について精通している、というのは無理なことです。
もちろん、地元(自分の場合は都心エリア)については、土地値でも賃料でも利回りでも、それなりの相場感覚がありますが、とはいえ日々マーケットで直接情報を得ている業者さんや投資家には到底かないません。

では、相場を知らないから不動産鑑定士は使えないのか、といえばそんなことはありません。

不動産の市場価格をはじくためには、対象物件の用途や権利関係によってさまざまな手法を組み合わせますし、集めた資料やデータ、取引事例などをいろいろな角度から分析しないといけません。
ホテル、物流施設、商業施設などの特殊な用途であれば、各用途の特性や事業収支の構成についても知っておく必要があります。

業者ヒアリングは、現場の貴重な意見として参考になりますが、たくさん集める市場データの一つにすぎません。
実際に、聞き方や聞く相手によって価格水準には相当の幅があります。

知り合いのデキる鑑定士はみんな、事前に周辺の事例や相場情報を集めて、「どういう属性の人がいくらぐらいで買いそうだな」という自分なりの仮説を立てたうえで、それを検証する位置づけでヒアリングしています。

最近では、鑑定士自ら「しょせん鑑定士は取引に関わらないし相場を知らないから」と卑下する声も聞きますが、相場を調べて伝えるのが鑑定士の仕事ではありません。

一人ひとりの鑑定士は、今まで評価してきた様々な物件のことを振り返ってみて、もっと自信を持っていいのではないでしょうか。

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