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「ブレイクアウト・ネーションズ 大停滞を打ち破る新興諸国」(ルチル・シャルマ著)

世界に分散投資する個人投資家こそ、広く世界経済のことを勉強しておくことが必要だと感じます。

今回読んだのは、新興国市場の将来予測でベストセラーとなった「ブレイクアウト・ネーションズ」。
著者のルチル・シャルマ氏は、モルガンスタンレーで新興国市場での運用を手掛け、世界中の新興国・途上国を実際に歩いてきた人です。

「ブレイクアウト・ネーションズ」とは、新興国の成長率鈍化が予測される今後も、同じ所得階層にある競合国より突出した成長を成し遂げられる国々のことです。

そのような国を見極めるには、新興国を従来のように「全体」としてではなく「個別」に見ることが大事だ、というのが全体を通してのメッセージかと思います。

具体的には、長らくBRICsと呼ばれてきた国から、フロンティア諸国まで多くの新興国が取り上げられています。

・中国、インド、ブラジル、ロシア
・メキシコ、ポーランド&チェコ、トルコ、東南アジア(インドネシア、フィリピン、タイ、マレーシア)、韓国&台湾、南アフリカ
・第四世界(スリランカ、ベトナム、ナイジェリア、中東)

第二章以降の各論で、新興諸国の抱える問題点と将来性について指摘がなされます。
いくつか抜粋すると・・

・中国
 影の銀行を含めた債務残高の多さ、高齢化と生産年齢人口の減少、賃金上昇と農村の余剰労働力の枯渇・・・

・インド
 肥大化した政府部門、汚職と縁故資本主義、政府とコネのある上位企業や財閥への富の集中と固定化、農村福祉政策により人口が農村に滞留・・・

・ブラジル
 コモディティ依存の経済、インフラ投資の不足によるボトルネック、教育と労働者のレベルの低さ、非効率・高コスト体質、低成長なのにインフレ&通貨高・・・

このあたりは本書で帯コメをしている吉崎達彦さんの「溜池通信」(vol513、2013年2月22日号)の解説が分かりやすいのでご覧ください。

本書は、実際に新興諸国を実際に歩き回ってきた著者によるもので、とてもリアリティーがあります。
また、経済や金融面だけでなく、その背景にある政治体制や社会、文化、歴史の側面をふまえて分析しているので、説得力が高く、読み物としても面白いです。

「新興国」というと、「人口増加率が高く、資源などが豊かで、先進国より高い成長が見込める国」という漠然としたイメージが想起されます。
私もそうでした。

この本は、「新興国」と一口にいっても、各国がそれぞれ成長ステージや産業構造に応じた全く異質な問題を抱えていること、新興国をひとまとめにして考えることの危険さを教えてくれます。

ただし、肝心の「次なるブレイクアウト・ネーションはどこなのか?」には、それほど直接的に答えていません。
最後の部分で、所得階層別に、トルコ、タイ、インドネシア、フィリピン、スリランカ、ナイジェリアなどが例示されている程度です。
それは著者も断言はできないし、一人ひとりが調べ、考え、予測しないといけないということでしょう。

従来のMSCIエマージング・マーケット・インデックスを中心とした新興国への分散投資をこの先も続けていて本当に良いのか?と考えずにはいられなくなる良書です。

ブレイクアウト・ネーションズ
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【関連記事】
「新興国の時代」は終わるのか(大和総研レポート)




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