【鑑定小話】グロス貸しとネット貸し
●ネット貸し(ネット面積)とは
貸室部分の面積(ネット面積)をそのまま契約面積とするのがネット貸しで、分かりやすい契約形態です。
中規模(貸室面積150坪ぐらい)よりも大きいオフィスビルはネット貸しが中心です。
<ネット貸しの例>
中央区にあるオフィスビルです。
水色の部分(169坪)が契約面積の範囲です。事務室の面積と契約面積が一致しており問題ありません。

●グロス貸し(グロス面積)とは
ビルには、貸室以外にトイレ、給湯室、廊下、エレベーターホールなどの共用部が存在します。
貸室のネット面積だけでなく、これらの一部または全部を契約面積に加えた賃貸借契約がグロス貸しです。
テナントが専用的に使用するトイレや給湯室のみ加える場合もあれば、階段室やエレベーターシャフト部分まで全部入れてしまう場合などさまざまです。
グロス面積に含まれる貸室以外の部分のことを、広告や契約書上で「共用負担」と表示しているケースもあります。
また、同じビルの中で、フロアによってネット貸しとグロス貸しが混在していることもあるので注意してください。
<グロス貸しの例>
千代田区内で募集しているビルです。
ピンク色の契約面積の中に、EVホール、トイレ、湯沸室が含まれます。ネットとグロスの差が比較的大きいです。

もう1件、大田区内で募集しているビルです。
廊下をはさんだトイレも賃貸面積に含めています。

このように、色塗り図面などがあれば気づきやすいですが、実務ではそのようなケースは少ないです。
●評価上の注意点
グロス貸しのビルを評価する場合は、賃貸面積を標準的なネット面積に換算して賃料単価を検討する必要があります。
(例)
・対象不動産のあるフロアの契約面積は54坪(グロス)で、共益費込賃料は810,000円(坪単価15,000円)だった。
・築年、グレードが似ている周辺競合ビルが15,000円/坪前後で成約していたため、対象不動産のマーケット賃料を15,000円/坪前後と判断した。※ただし競合ビルはネット貸し。
ここで、グロスとネットを区別せずに、賃料単価だけを見て、「対象不動産の賃料坪単価は15,000円だから相場と同じで妥当だ。」と判断してしまう鑑定士が結構います。
しかし、
・対象不動産はグロス貸しで、純粋な貸室部分のネット面積を計ると45坪しかなかった。
すなわち、ネット貸しの競合ビルと同じ条件で比較した場合、対象不動産の現行賃料単価は、
810,000円÷45坪=18,000/坪となり、相場(15,000円/坪)を大きく上回ります。
「現在は相場よりも割高なので、将来テナントが入れ替わったら賃料が下がるリスクがある」という全く違う結論となるのです。
グロス面積とネット面積の差は2割ぐらいになることも珍しくなく、特に収益還元法の評価シナリオや評価額に大きく影響することもあるので注意が必要です。
グロス貸しとネット貸しが混在するのは、50〜100坪ぐらいのオフィスビルがメインです。
もっと小さい20〜30坪程度のビルでは、「エレ直」(EVを開けたらすぐ目の前が事務室)で、専用室内にトイレや給湯スペースを設けている場合も多く、ネットとグロスの区別はあまり厳密でなくなります。
まとめると以下のとおりです。
◆対象不動産の賃貸借契約はネット貸しかグロス貸しか、グロスの場合どこまで契約面積に含まれるのか、契約書添付図面や現地で確認する。
◆グロス貸しの場合は、ネット面積あたりの賃料単価に換算して賃貸事例との比較や市場賃料の検討を行う。
<関連記事>
・【鑑定小話】不動産の純収益(NOIとNCF)(その1)
・不動産鑑定評価基準が大幅改正へ
・【鑑定小話】奥が深い「単価と総額」
貸室部分の面積(ネット面積)をそのまま契約面積とするのがネット貸しで、分かりやすい契約形態です。
中規模(貸室面積150坪ぐらい)よりも大きいオフィスビルはネット貸しが中心です。
<ネット貸しの例>
中央区にあるオフィスビルです。
水色の部分(169坪)が契約面積の範囲です。事務室の面積と契約面積が一致しており問題ありません。

●グロス貸し(グロス面積)とは
ビルには、貸室以外にトイレ、給湯室、廊下、エレベーターホールなどの共用部が存在します。
貸室のネット面積だけでなく、これらの一部または全部を契約面積に加えた賃貸借契約がグロス貸しです。
テナントが専用的に使用するトイレや給湯室のみ加える場合もあれば、階段室やエレベーターシャフト部分まで全部入れてしまう場合などさまざまです。
グロス面積に含まれる貸室以外の部分のことを、広告や契約書上で「共用負担」と表示しているケースもあります。
また、同じビルの中で、フロアによってネット貸しとグロス貸しが混在していることもあるので注意してください。
<グロス貸しの例>
千代田区内で募集しているビルです。
ピンク色の契約面積の中に、EVホール、トイレ、湯沸室が含まれます。ネットとグロスの差が比較的大きいです。

もう1件、大田区内で募集しているビルです。
廊下をはさんだトイレも賃貸面積に含めています。

このように、色塗り図面などがあれば気づきやすいですが、実務ではそのようなケースは少ないです。
●評価上の注意点
グロス貸しのビルを評価する場合は、賃貸面積を標準的なネット面積に換算して賃料単価を検討する必要があります。
(例)
・対象不動産のあるフロアの契約面積は54坪(グロス)で、共益費込賃料は810,000円(坪単価15,000円)だった。
・築年、グレードが似ている周辺競合ビルが15,000円/坪前後で成約していたため、対象不動産のマーケット賃料を15,000円/坪前後と判断した。※ただし競合ビルはネット貸し。
ここで、グロスとネットを区別せずに、賃料単価だけを見て、「対象不動産の賃料坪単価は15,000円だから相場と同じで妥当だ。」と判断してしまう鑑定士が結構います。
しかし、
・対象不動産はグロス貸しで、純粋な貸室部分のネット面積を計ると45坪しかなかった。
すなわち、ネット貸しの競合ビルと同じ条件で比較した場合、対象不動産の現行賃料単価は、
810,000円÷45坪=18,000/坪となり、相場(15,000円/坪)を大きく上回ります。
「現在は相場よりも割高なので、将来テナントが入れ替わったら賃料が下がるリスクがある」という全く違う結論となるのです。
グロス面積とネット面積の差は2割ぐらいになることも珍しくなく、特に収益還元法の評価シナリオや評価額に大きく影響することもあるので注意が必要です。
グロス貸しとネット貸しが混在するのは、50〜100坪ぐらいのオフィスビルがメインです。
もっと小さい20〜30坪程度のビルでは、「エレ直」(EVを開けたらすぐ目の前が事務室)で、専用室内にトイレや給湯スペースを設けている場合も多く、ネットとグロスの区別はあまり厳密でなくなります。
まとめると以下のとおりです。
◆対象不動産の賃貸借契約はネット貸しかグロス貸しか、グロスの場合どこまで契約面積に含まれるのか、契約書添付図面や現地で確認する。
◆グロス貸しの場合は、ネット面積あたりの賃料単価に換算して賃貸事例との比較や市場賃料の検討を行う。
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- 2014.08.16 Saturday
- 不動産鑑定の話
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