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渋澤健さん「渋沢栄一 愛と勇気と資本主義」出版記念講演会(その2)

渋澤健さんの「渋沢栄一 愛と勇気と資本主義」の出版記念講演会のレポート後半です。

前半記事はこちら



●「常識」とは何か?

・栄一の言う健全な常識とは、「智」「情」「意」の三者がバランスよく発達した状態のこと。「智」は智恵(wisdom)、「情」は情熱(emotion)、「意」は意志(will)。

・ジム・コリンズの「ビジョナリー・カンパニー2」や、古くは「オズの魔法使い」でも、この3つの要素が登場する。栄一の「常識」とは時代や国を超えた普遍的な考え方。

●現代に通ずる「元気振興の急務」

・栄一は、道徳の重要さを説いたことなどから、「優しい資本主義」のように理解されることもあるが、実際はとても厳しく、アグレッシブなことも言っていた。

・栄一の講演録「元気振興の急務」の中に次のような一節がある。
(以下引用)
『頃日来社会の上下一般に元気が銷沈して、諸般の発達すべき事柄が著しく停滞し来たやうである。
これは要するに社会が稍々秩序的になつた共に、人々が何事にも慎重の態度をとるやうになって来たから。』

其の日其の日を無事に過されへすればそれでよいといふ順行のあるのは、国家社会にとつてももっとも痛嘆すべき現状ではあるまいか。』

『我国の有様は、是迄やり来た仕事を大切に守って、間違いなくやつて出るといふよりも、更に大に計画もし、発展もして、盛んに世界列強と競争しなければならむのである。』


明治維新後の急成長の後、守りに入り、活力を失った当時の日本人に対する強いメッセージだが、これは現代の日本(戦後の高度成長〜停滞)にもそのまま当てはまる。
このような言葉からも、栄一の思想が今の日本にこそ役立つことが分かる。

●枠の"ウチ"と"ソト"

・「元気振興の急務」で、栄一が言いたかったのは、「枠」の内側にとどまるな!ということではないかと思っている。「枠」とは、国や地域、業界や会社、部署、あるいは自分の固定観念を指す。

・人間は冒険せず、既存の枠の中にいる方が安全だし快適なので、出たくないのが自然。しかし、みんなが枠の中にとどまろうとすると、枠自体がどんどん小さくなっていってしまう。
勇気をもって枠のソトに出て、ソトから枠を見てみることも大事。

・コモンズ投信の運用も、外部(枠のソト)からの対話を通じた、企業(枠のウチ)の価値創造を目指している。

●30年周期説

・日本の近現代の発展の歴史を見ていくと、一直線ではなく一定の周期があることが分かる。
そして、それは破壊・停滞と繁栄・成長を繰り返している。

 1870年〜1900年 維新(破壊と新秩序)
 1900年〜1930年 工業化
 1930年〜1960年 戦争〜戦後
 1960年〜1990年 高度成長とバブル
 1990年〜2020年 失われた20年から東京オリンピックへ
 2020年〜2050年 再び繁栄?

・しかし、2020年以降の日本と、かつての日本とは、人口動態が根本的に異なる。人口ピラミッドを見ている限り、2020年以降の30年を繁栄の時代とするのは難しいように見える。

・ただ、人口減少と高齢化の中でも新しい成長モデルを描ける可能性はある。それは、今後30年で社会の中心になる団塊ジュニア世代の頑張りがカギになる。彼らは、高度成長を知らない世代なので、むしろ従来の高度成長型ではない新しいモデルをつくれるかもしれない。


【感想】

渋沢栄一の書物を読んだことのない自分にとっても、その思想の全体像がよくイメージできるお話でした。
また、渋澤さんも言っていましたが、栄一の考え方と、コモンズ投信の掲げる「共感資本」「持続的成長」「見えない価値」などのキーワードや「今日よりもよい明日」といったフレーズと、相通じる部分が結構あります。 

ただ、そのような素晴らしい理念が、投資信託としてのコモンズ30ファンドの実際の運用や銘柄選定にどこまで活かされているかについては、まだはっきり理解できていない部分もあります。

コモンズのことは抜きにしても、渋沢栄一の思想自体は今こそ読み直す価値があると思いますし、もうちょっと学んでみようかと思います。仕事や生活していく上でいろいろな気づきがありそうです。

例えば、「論語と算盤」の考え方は、企業の社会性という意味で、鎌倉投信の「いい会社」や、マイケル・ポーターの「CSV」といった概念とも同じような方向なのかな、とも思いました。

渋澤さんがこのような書店のトークイベントに出るのは初めてだそうで、貴重な時間でした。
せっかくなのでサインも頂きました。




渋沢栄一 愛と勇気と資本主義 (日経ビジネス人文庫)
渋澤 健
日本経済新聞出版社
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