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【鑑定小話】東急リアル・エステート投資法人の隣地併合事例(限定価格)

東急リアル・エステート投資法人(東急REIT)が、1/9に取得予定の「東急虎ノ門ビル隣接土地」の取引は、REITではまれな、鑑定評価額が「限定価格」の隣地買収事例です。

限定価格を理解するのにとてもいい事例なのでご紹介します。

限定価格は、不動産の実務経験があれば感覚的に理解しやすいと思いますが、いきなり鑑定士の勉強から入る人にとっては、とっつきにくい概念です。

鑑定評価基準での限定価格の定義は・・・ 
「限定価格とは、市場性を有する不動産について、不動産と取得する他の不動産との併合又は不動産の一部を取得する際の分割等に基づき正常価格と同一の市場概念の下において形成されるであろう市場価値と乖離することにより、市場が相対的に限定される場合における取得部分の当該市場限定に基づく市場価値を適正に表示する価格をいう。」


お経のようで、受験時代は暗記するのが大変でした。
このような難解な概念は、字面で暗記しようとせず、具体的な事例で考えないと理解できません。


●東急虎ノ門ビル隣地取得の価格算定プロセス

今回の東急REITの事例は、既所有の「東急虎ノ門ビル」に隣接する土地を購入して、古ビルを取壊し、新たに増築するものです。

国内不動産(東急虎ノ門ビル隣接土地)の取得及び東急虎ノ門ビルの増築に関するお知らせ
(PDFファイル)

この隣地買収&増築によって、東急REITにとっては、
・基準階面積が増加、貸室形状が改善
・間口が14mから28mに増え視認性アップ
などのメリットがあります。

したがって、第三者が当該地を単独で購入する場合の市場価格(正常価格)よりも、隣地所有者の東急REITが地上げした方が、より高い価格を出してもペイできます。
このように、隣接所有者からみた「市場価格より高く買っても合理的な価格」が限定価格です。

リリースより、日本不動産研究所の鑑定評価をみてみます。
もともと所有している東急虎ノ門ビル敷地:A(グレー)
今回取得予定隣地:B(オレンジ)
AとBをあわせた一体地:C とします。


(プレスリリースより転載)

・Aの正常価格  171億円
・Bの正常価格   13億円
・Cの正常価格  190億円
・併合による増分価値 C−(A+B)=6億円
・増分価値のBへの配分額 0.4億円(AとBの総額比率で配分)
・Bの限定価格 13億円+0.4億円=13.4億円

A土地とB土地が併合して一体地Cになったことにより、2つの土地の単純合計(171+13=184億)よりも、一体地の価格(190億)の方が大きくなっており、これが併合による増分価値です。

これは2つの土地がお互いに貢献して生まれたメリットなので、鑑定評価では、A、Bの総額比、単価比、買入額限度比といったやり方を使って、それぞれの土地に配分します(今回は総額比を採用)。

隣地併合によって、2画地の単純合計よりもプラスαの増分価値が生まれる典型的なケースは、裏通りにしか面していない土地が表通りにも面することで収益性が大きくアップするなどの場合です。

一方、本件の場合は、もともと既に表通り(桜田通り)に面しており、隣地を買収しても間口が広がる程度のプラス要因しかないため、増分価値は6億と小さく、対象地Bへの配分も7%程度(4千万円)にとどまります。

以上が限定価格を出すまでの評価の流れです。詳しくはプレスリリースをご覧ください。


●限定価格の難しさ:増分価値をどう配分するのか

しかし、本案件が面白いのは、この評価にはまだ続きがあるところです。
なぜなら、実際に東急REITが買収した隣地の価格は18.5億で、鑑定評価額13.4億を大きく上回ってしまっています。
これでは、投資家に対して説明がつきません。

そこで、鑑定評価書とは別に、対象地を19億円と評価した「調査報告書」を鑑定士に書いてもらった上で、売買価格はそれよりは低いので妥当です、という説明になっています。

具体的には、併合による増分価値(6億円)を、まるまる100%、隣地の正常価格13億円に上乗せして、買収を前提とした場合の理論的な上限価格(19億円)としています。

単独での市場価格は、既存ビル敷地171億円、隣地13億円、一体地190億円です。
したがって、既存ビル所有者から見ると、190億円−171億円=MAX19億円まで出して地上げしても、経済合理性には反しません。

ですので、今回の研究所の評価は、鑑定評価額としては13.4億円だが、最大19億円までは出してもオカシクはないという両論併記としているのです。

しかし、普通の人がこのプレスリリースをみたら、「結局13.4億円と19億円のどっちが評価として正しいのか?」となり、とても分かりにくいと思います。

限定価格はもともと不特定多数のマーケットで成立する価格ではなく、「特定の当事者間に閉じた世界で」決まる価格なので、ピンポイントでいくらと言えない性格を持っています。
これが限定価格の難しいところです。

今回の場合、隣地の価格の下限値は正常価格13億円であり、上限値は増分価値を100%上乗せした19億円です。
このレンジのどこかで決まる、としか実は言えない面があるのです。

限定価格の評価では、このように、2つの土地が併合した場合の増分価値を、どのように配分するか、という問題に最終的に帰結するので、鑑定士としてはいろんな角度から検討して説明する必要があります。
一般の鑑定評価では、総額比、単価比、面積比、買入限度額比、など複数の方法を併用して行っています。



       
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