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収益物件のキャップレートを自動算定するサービス「Capree(キャプリー)」が開始

不動産鑑定士にとって、適正な利回りを求めるのは評価の肝とも言える部分です。
その、利回り(キャップレート)を、J-REITの取引データをもとに自動算定するという、こんなサービスが始まりました。

REIT情報ポータルサイト「JAPAN-REIT.COM」にてキャップレート参考値自動算定サービス『Capree(キャプリー)』を開始|【アットプレス】

(上記プレスリリースより引用)
『これまで不動産価格を決める際の重要な要素となるキャップレート水準を的確に算定することは、極めて専門性の高い業務でした。当サービスをご利用頂くことで、CPC社の持つ豊富なノウハウに基づき、精度の高いキャップレート参考値を手軽にかつ自動的に算定することが可能となります。』


上記の「CPC社」というのは、信用リスクの分析や評価サービスを行っている螢レジット・プライシング・コーポレーションです。
サービス運営はJAPAN-REITが行いますが、実際の利回り算定のモデルはCPCが提供します。

物件の用途、住所、規模、築年、駅距離、権利形態などのパラメータを入力すると、CPC社が、過去のJ-REITの取引事例データに基づき作った独自の統計モデルで計算し、想定利回りを自動算出します。

利用料は、REIT事例の有無、キャップレートの将来予測有無などにより、1件あたり9,800円〜45,000円となっています。

(サンプル画面抜粋)

『Capree』サービスTOPページより)

安く簡単に利回りが分かる便利なサービスかもしれませんが、ちょっと気になる点もあります。

このサービスは、キャップレートの参考値を自動算定しますと言いつつ、実際には物件の「推定参考価格」まで表示されます。

入力上、物件NCF(物件収支)の実績を入れる仕様になっているので、キャップレートが分かれば、NCF÷キャップレートで自動的に評価額も出ます。
サイトでも、「迅速かつ安価に不動産の評価が可能!」とアピールしています。

ここで、われわれ不動産鑑定士と鑑定業について定めている「不動産の鑑定評価に関する法律」では、以下の規定があります。

第二条  この法律において「不動産の鑑定評価」とは、不動産(中略)の経済価値を判定し、その結果を価額に表示することをいう。
2  この法律において「不動産鑑定業」とは、自ら行うと他人を使用して行うとを問わず、他人の求めに応じ報酬を得て、不動産の鑑定評価を業として行うことをいう。


この通り、法律上は、報酬をもらって、業として不動産の価格を提示することは、(不動産鑑定評価書などのレポートでなくても)「鑑定評価」にあたり、登録を受けた鑑定業者以外がやってはいけないことになっています。
その点、このサービスは、個別物件の評価額が表示されるので、ややグレーな感じがします。

折しも、鑑定士協会は、ナワバリを荒らす「鑑定評価類似行為」を厳しくチェックしています。

「不動産鑑定には多額の費用がかかるうえに、恣意的な調整も含まれる場合もあり、実際の市場価格を反映していない可能性があります。」との記載もあります。
鑑定士協会としては見過ごせないでしょう。

ただ、実際にどうかと言えば、個人的には、このサービスが鑑定士の業務を侵害する可能性は低いと思います。
あたかも簡単に評価額を算定できるかのようにアピールしていますが、個別物件のあるべき利回りを、物件も見ずに、マクロデータだけで導き出せればこんな楽なことはありません。

そもそも、不動産は、土地、建物、周辺状況、契約内容、権利関係、維持管理・・・、あらゆる要素が物件ごとに全部違います。
また、適正なキャップレートの判断は、そのような多くの要素をいろんな角度から見た上で、今の収支がどの程度安定的か、キャッシュフローの将来予測とセットでなければあまり意味がありません。

もちろん、J-REITなどの公表事例を分析した統計データを、個別の不動産評価に役立てることは意味があると思いますが、そのようなデータから導き出された利回りは、あくまで目安にすぎません。

ただ、大量の担保物件を評価する必要のある金融機関や、膨大な所有物件を時価評価する不動産会社などは、金額の小さい物件まで全部鑑定を頼むわけにもいかないですから、簡易なツールとしてある程度需要があるのでしょう。

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