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ESG投資か、責任投資か?<高崎経済大学 水口剛さん・日本サステナブル投資フォーラム(JSIF)セミナー>

個人会員になっているJSIF(日本サステナブル投資フォーラム)のセミナーに参加しました。

「サステナブル投資論〜今、欧州で何が起きているのか」とのテーマで、講師はJSIF共同代表を務める、高崎経済大学教授の水口剛さん。

水口さんの著書にある「資金の流れで未来を変える」という考え方に結構影響を受けたこともあり、一度お話を聞きたいと思っていました。

(関連記事)
【書評】責任ある投資―資金の流れで未来を変える(水口剛 著)




日本は「ESG投資」、ヨーロッパは「責任投資」


サステナブル投資の本元ヨーロッパではESGも含め「責任投資」という考え方が定着しています。一方、日本では最近急に「ESG投資」という言葉が脚光を浴びてきました。

これは、公的年金の積立金を運用するGPIFが、国連PRI(責任投資原則)に署名し、ESG投資に本格的に乗り出すと宣言したことが大きな理由です。さらにもとを辿ると、2014年のスチュワードシップコード導入、さらには伊藤レポートからの流れがベースにあります。

確かに、日本でESGというと、企業価値を持続的に向上させるために、投資家が積極的にエンゲージメントしていくという文脈で語られがちです。

しかし、水口さんは、それ自体はいいことだが、国内のこの一連の流れと、本来の「環境や社会に配慮した責任投資」との間には乖離があると指摘します。自分も同じような違和感がありました。

※参加者からも、日本ではG(ガバナンス)への着目がメインで、E(環境)やS(社会)を深く掘り下げている運用機関はまだ少ないのでは?との意見が出ました。
以前、三井住友信託銀行の金井司さんから聞いた「GSE」か「ESG」か?という論点と通じると思います。
(関連記事)
「ESG投資に向けた企業情報開示〜統合報告とエンゲージメントのために〜」(エコプロダクツ2015 自然資本セミナー)(その1)

このままだと、運用業界の中で、ESGに対する本質的な理解がないまま、ESGという言葉だけが独り歩きする恐れがあります。(メディアもそれを後押ししかねないと個人的には思います。)

具体的には、「ESGは超過収益につながる(儲かる)」という営業トークに使われたり、「環境や社会に配慮して銘柄を選んだESGファンドです」と言いつつ、従来のアクティブファンドと実質的に変わらない、形だけのESGファンドが乱立する、という事態です。一時のSRIファンドのように、日本のESGが一過性のブームで終わってしまいかねません。


本家ヨーロッパの本質的なESGの取り組み


一方、欧州のESG投資が、本来の「責任投資」であることを示す要素として、以下の4点が指摘されました。欧州の投資家は、特に環境や社会の面のインパクトに対して、投資を通じた影響を詳しく分析し、責任をもって対応しようとしています。

- ポートフォリオ全体の影響に着目
- エンゲージメントを通じた影響力の行使
- ビジネスモデルの議論への踏み込み
- 移行リスクと機会への着目(真のリスクと機会に対する深い分析)

具体例も紹介されました。

・モントリオールカーボンプレッジ
 THE MONTREAL CARBON PLEDGE
2014年の国連PRI年次総会で打ち出された。投資先企業の環境負荷(CO2排出量、カーボンフットプリント)を毎年計算して公表する取り組み。120の年金基金などが賛同。

→ 個別企業ではなく、分散投資ポートフォリオ全体の環境インパクトを定量化して、投資家の環境責任を明確にしようとするもの。

・座礁資産(Stranded Assets)
平均気温上昇を+2度以内に抑えるには、使える化石燃料の上限(Carbon Budget)が決まってくるので、それ以上はあっても掘れない(座礁)資産である、という考え方。

→ 石油・石炭産業のダイベストメント(投資除外)や売却につながっている。経済システムの長期的な移行リスクを投資判断に反映させている例。

【水口教授のヨーロッパ通信】売却か、エンゲージメントか-2℃目標と投資行動

他にも、気候変動に特化した石油会社への株主提案や、インパクト投資(社会的企業への投資)、動物福祉の観点からの食品会社のレーティングなど、環境、社会の分野で、年金などの投資家、運用会社が積極的に関わっています。

【水口教授のヨーロッパ通信】工場的畜産のリスク − 動物愛護からESG課題へ

このように、ヨーロッパの投資家が深いレベルでESGにコミットしているのは、超過収益の追求や、リスク抑制の面だけでなく、ESGが「受益者共通の価値」であるという国民側の意識や、良好な環境や社会が長い目で見ればポートフォリオ全体の利益につながるという「ユニバーサルオーナー」の考えが浸透しているためとの見解でした。平たく言えば、市民や投資家の意識が高い、ということでしょう。

最近のヨーロッパでは、中東やアフリカからの難民移民問題が深刻かつ国民にとって喫緊の課題となっています。格差拡大など社会課題に対する危機感の強さが日本と大幅に異なるのも、責任投資が浸透しやすい一因です。

以上を踏まえると、相対的に市民意識が未成熟な?(一概には言えませんが)日本で、ヨーロッパのように真の意味での責任投資たるESGが普及するかは難しい面もあるかもしれません。


個人投資家として考えること


サステナブル投資の本家であるヨーロッパと、日本のESG投資の動きの対比を通じて、ESGの本質を考えるセミナーでした。

ESGを、単に(短期的な)リターンを上げる、リスクを下げる投資手法としてではなく、目指すべきサステナブルな社会を長期的に実現するための投資の価値観と捉えるのが大事だと思います。(超過リターンやリスク低減はその結果であり、ありきではない)

これから「ESG」をうたう投信なども増えてくることが考えられます。個人投資家としても、「ESG」の冠に踊らされず、運用者の価値観と運用の中身をしっかり見極める姿勢が大事だと感じました。


【関連記事】
GPIFのESG投資と受託者責任

「日本サステナブル投資白書2015」発刊記念シンポジウム(その1)

「サステナブル投資の主流化に向けた潮流と今後」(PwCサステナビリティセミナー)

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