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クルミドコーヒー・影山知明さんとの対話「続・ゆっくり、いそげ〜いのちの形をした経済」(1/18 池袋コミュニティ・カレッジ)

少し前ですが、西国分寺のカフェ、クルミドコーヒー店主・(株)フェスティナレンテ代表取締役の影山知明さんの話を聴いてきました。

影山さんは、マッキンゼー、ベンチャーキャピタルを経て独立。地元の西国分寺で、2008年にカフェ「クルミドコーヒー」をオープンし、地域から新しい経済のかたちを発信し続けています。

ちょうど今、隣の国分寺で、2店舗目「胡桃堂喫茶店」のオープンに向け、セキュリテで資金を募っています。影山さんの本「ゆっくり、いそげ」にとても共感し、ファンドにも出資しました。
クルミドコーヒーファンド|セキュリテ

今回は、「ゆっくり、いそげ」に込めたメッセージを直接お聞きできました。
長くなりますが、覚えておきたい話ばかりなので、本のレビューも兼ねて書きます。




●お互いを利用するのではなく「支援し合う」関係へ

影山さんは、人間同士が「利用し合う」のではなく(=take)、「支援し合う」関係(=give)による新しい経済のかたちを提示しています。

前提にあるのは、今の資本主義社会への問題意識です。今の資本主義には、四半期決算など、利益を第一に追求せざるを得ないシステムが組み込まれています。一人一人が、金儲けが全て、とは思っていなくても、組織の中では人間は利益や成長のために役立つかどうか(利用価値)で測られ、手段化されていきます。
これは個人レベルでも同じで、自分の利用価値を高めるためにお客を利用する、会社を利用するという考え方が広まっています。

利益や成長の追求は資本主義の原動力です。それ自体が否定されるものではないけれど、ただ、ここで一旦、「お金のために働く」のをやめてみては? 誰かを利用するのではなく「誰かを喜ばせる」という本来の働くことの意義に立ち戻ってみては? というのが影山さんの提案です。


●"GIVE"からはじめる

影山さんのお店、クルミドコーヒーでは、お店と顧客がGiveし合う関係性をじっくりと培ってきました。
クルミドコーヒーで出てくる、原価と手間のたっぷりかかった季節のスイーツや、自由に取っていいテーブルの上のクルミは、例えば1,000円の会計をしたお客さんの多くを、1,000円以上のものを受け取った気にさせます。これを影山さんは「健全な負債感」(値段以上のもの頂いた感)と表現します。

人はみな「消費者」の面と「受贈者」の面を持っています。「消費者」は「一円でも安いものがほしい」「おトクなサービスを受けたい」という経済人としての側面です。「受贈者」は相手に恩返しする、あるいはGiveしたいという利他的な面です。

お店側からたくさんGiveされた顧客は「健全な負債感」を持ち、自分の中の「受贈者」性にスイッチが入ります。「こんなにしてもらったらお店にお返ししないと」という気持ちが、自然とリピートや口コミなどいろいろな形を通じて、お店に対する顧客からのGiveとして返ってきます。

そして、(特に日本のような成熟しきった国では)実はこのGiveの循環こそが、経済全体の成長につながるはずというのが影山さんの仮設です。値下げ競争で縮小均衡に陥っている外食産業が多い中で、クルミドコーヒーはこの顧客との関係性をベースに年2割ペースで成長しています。

ただ、実際にGiveからはじめるとなると、言うは易し、ビジネスの中で実践するのは本当に大変なことだろうなと感じました。




●感謝でつながるお金−地域通貨「ぶんじ

「支援し合う」関係をお金で表現したのが、国分寺の地域通貨「ぶんじ」です。
「ぶんじ」は、例えば地元の農家の草取りを手伝ったら「100ぶんじ」というように、地域で誰かを仕事で支援すると受け取れます。クルミドコーヒーはじめ、地元のお店で実際に使うことができます。

影山さんは、お金とは「何かを手に入れるためのもの」ではなく、「人の仕事を受け取る(=感謝を表す)ための道具」だと言います。

「ぶんじ」はまさに感謝でつながる通貨です。
「ぶんじ」を渡す(仕事をしてもらった)側は、ぶんじの裏に相手への感謝のメッセージを書き込みます。こうしてぶんじが流通するごとに、感謝がつながっていきます。お金や自己利益のために働く発想から、Giveするために働く発想へと転換するツールともいえます。

今回、講演に参加して、影山さんのメッセージ付で100ぶんじを頂きました。クルミドコーヒーで使いたいですね。

(参考)町のつながりをゆるやかに紡ぎ直す 〜地域通貨「ぶんじ」(東京・国分寺)




●不特定多数でもなく特定少数でもない「特定多数」

「支援し合う関係」ともう一つのキーワードが「特定多数」です。
「特定多数」は、不特定多数でもなく、特定少数でもない、その間という意味。

不特定多数のグローバルな市場経済の中では、モノやサービスの提供者と受け手がお互いに顔が見えないので、誰にとっても普遍的な、価格や機能のみの競争になっていきます。

例えば、国内産の、1kg3,000円するけど安全で丁寧に育てられたクルミと、外国産の1kg1,000円の大量生産されたクルミは、純粋な市場経済では勝負になりません。

ただ、価格以外の別の価値が成り立つ「特定多数」の参加者間なら、国内産の高いクルミを買うことにも十分に経済合理性が見出せます。例えば、お客にとっては、生産者や地元の人たちとの顔の見える関係や、豊かな自然の中での収穫体験という貴重な経験が得られ、生産者側にとっては、収穫体験を通じて無報酬で進んで手伝ってくれる人手や安定的な卸先の確保ができます。

クルミドのコーヒーが1杯650円でも、近くのドトールではなくこっちに来るお客さんがたくさんいるのも、単純に価格以外の、空間や雰囲気の魅力や、スタッフとの顔の見える関係に魅かれてくる人が「特定多数」いるからです。

ただ、ビジネスを持続可能にするには、これが「特定少数」ではなく、ある程度の規模の参加者(=ファン)が必要です。影山さんはざっくり3,000人以上ぐらいをイメージしているそうです。

この話を聴いて、鎌倉投信が思い浮かびました。自分も、単なるお金的なリターンだけではなく、運用会社との顔の見える関係や、ファンドの社会的な側面、自分の学びなどいろいろな価値を見出して、お金を託しています。
「いい会社」とともに歩む、という考え方は、万人受けはしないとしても、一定の層にはとても響く、そういう意味で「特定多数」だと思います。

講演の後に質問したのですが、この「特定多数」のコミュニティ同士がいろいろなレベルでつながっていくと、「不特定多数」ではないけれど、ベクトルがある程度共通する「特定多数」のゆるやかなネットワークが世の中のマジョリティを構成するようになるのでは?と思いました。


●いのちの形をした経済

影山さんは、思い描く経済社会のイメージを「いのちの形をした経済」と表現します。
これは、「ゆっくり、いそげ」のサブタイトルにある「人を手段化しない経済」を、よりポジティブな表現で言い替えたものです。

今までの社会は、全体の細かい設計を作り、それぞれの組織や仕事に人を部品のように当てはめていく発想でした。「いのちの形」とは、そうではなく、一人一人が枝のように、行きたい方向に伸びていく、社会や組織が樹形に育つ姿をイメージしています。これは、「ブリコラージュ」の考え方にも通じます。

※ブリコラージュは、フランス語で、その場にあるものを適当に組み合わせてものをつくる、という意味です。しっかりレシピや材料を準備するのではなく、出来合いのもので料理をつくるイメージ。レヴィ=ストロースの「野生の思考」で有名になった概念です。

従来の社会や組織の作り方と、いのちの形をした経済を対比すると分かりやすいです。
右側の方があたたかみや人間らしさを感じます。

 <従来の経済>    <いのちの形をした経済>
 工学的アプローチ  ⇔  生命論的アプローチ
 エンジニアリング  ⇔  ブリコラージュ
 設計図、都市計画  ⇔  あるものを組み合わせる 
 機械をつくる    ⇔  植物を育てる


・・・と長くなりましたが、
金銭的な価値ではない価値に着目することが、実は個人も社会全体も豊かになれる方向なのではないか?という影山さんの考え方にはとても共感します。

そういった思想を経営の中で実践することは簡単ではありませんが、大量生産や効率化だけを追求する時代でなくなった今、一人一人のいのちの形に沿った社会の方が幸せな方向ではないでしょうか。

最後に、「ゆっくり、いそげ」の末尾「GDPを成長させる方法」から引用します。

『お金のために働くこと、お金のための経済をやめる。お金以外の価値の大事さを見直す。一つひとつのしごとに、時間と手間をちゃんとかける。自分の目的のために目の前の人を、利用するのではなく支援するために力を尽くす。
 こうした経済のありようは、お金以外の価値を含めた「価値の総和」を大きくする方向に寄与するのみならず、実は人の可能性を引き出し、仕事の内実を高め、結果として長い目で見ると、世の金銭的価値そのものも大きくする方向にも働くのではないかと考えている。』


いかがでしょう。うなずける部分が大きいのではないでしょうか?

ゆっくり、いそげ ~カフェからはじめる人を手段化しない経済~
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